ヴェストワンカップ【WEST ONE CUP】西日本最大級メジャー麻雀大会 ベストワンカップ

(ヴェストワンカップ/ベストワンカップ)

第4回WEST ONE CUP自戦記【軽部 貴之】

第4回 WEST ONE CUP 自戦記 軽部貴之 (文中敬称略)

1000分の1。優勝出来るのはたった1人。関西で完結する大会で尚且つトッププロが参戦してくる大会は他にはない。予選から含めて長い道のりの最後の最後まで残った私が自戦記を書かせていただく事になりました。見づらい部分もあると思いますが何卒ご了承ください。

競技麻雀から距離を置いて4年程。WEST ONE CUPの存在は当然知っていたが、参加するつもりもなく優勝者の名前を後で見るくらいでした。心境が変わったのが昨年の優勝者麻雀共同体WWの板川和俊プロ。板川プロ主催でアマの向上心のある者数名と私で忙しい中定期的にセットを開催頂き、その際によく言って頂く言葉がいつかこの中から大きなタイトルを取れるようにと。久々に競技麻雀への情熱が甦った私は早速予選に出る事に。大きなタイトル戦、しかも現タイトルホルダー。これ以上うってつけの大会はない。目標は最低でもベスト16に残って本気で戦える場所で倒すことのみ。

早速予選に出る。決勝卓まで残るも、敗退。だが、失われた感触が戻ってきた。次は菜の花予選。84人中10人通過初戦ラススタートだったが4連勝で通過。初めての本戦だが目標は出場する事ではなくあくまで同卓して倒す位置まで残る事。通過してからはすべてWEST ONE CUPの調整のためだけに麻雀を打つ。そして迎えた5月26日本戦1日目、どこのブロックも強敵揃いだが自分の麻雀を打つだけ。2連勝、3着で迎えた4回戦目に大きく素点を減らす3着をひくも、最終5回戦目にメンピン即ジュンチャン三色をあがり2着で別卓の結果待ちへ。3位でベスト48に進出。

本戦2日目ここを通過すればいよいよ同卓が叶う。3-2-2とプラス20くらいで迎えた4回戦、南2局まで3着目と20000点以上離されたラス目。このままラスを引くとここで足切りの可能性もあるが絶対にベスト16まで残るという気持ちで再度自分を奮い立たせる。

1300.2600ツモから親番で2000オール4000オールと一気にトップまで浮上。最終5回戦は卓内2着でほぼ通過。着順勝負の石井阿依プロの親リーを受けて真っ向勝負でドラカン、カンドラもろ乗りの16000を直撃。このアガリか決定的となって2着キープ、4位通過、ベスト16に。

次週まで間が空くが、快くセットに付き合って頂いた方や応援して頂く皆さんのためにと気合を入れなおす。そして6月2日ベスト16へ。1回戦田内プロ、山越さん、坂本プロ。ここまできて弱い面子などいるわけもないが、2回戦の配信の為にトップをとって勢いをつけたい。道中手が入らなく受けにまわるも、南1局で立直ツモダブ南一盃口裏裏の倍満をつもり、親でも加点をして初戦トップで配信卓へ。2回戦、宮城さん、近藤プロ、そして板川プロ。初配信だが、さして緊張せずに親番で4000オールをアガリそのまま逃げ切って2連勝。とりあえずの配信で板川プロと打つ目標は達成した。こうなれば決勝を目指すのみ。

3回戦朝倉プロ、七種さん、海老沢プロ。七種とは同じく関西アマの生き残りでまだ若いが押し引きのしっかりした強敵。海老沢と朝倉はいうまでもなく格上だが、気持ちだけは負けない様に。朝倉が突き抜ける展開で熾烈なラス争いに。オーラス1000.2000をツモりなんとか2着で終了。

まだトータルトップだが、突き抜けたスコアの者がいない為、ラスを引くと一気に馬群に飲み込まれる可能性がある4回戦。薬王寺プロ、友添プロ、松ケ瀬プロ。

薬王寺、松ケ瀬の両名はスコア的にトップが欲しいところ。友添は私に次ぐトータル2位守りに入るポイントではないし、当然トップを狙いにくる。ホンイツの2000.4000をツモってからはほぼ参加する機会がなく親番の南3局へ。友添の仕掛け、松ケ瀬の立直を受けて現状2着目なのでオリを選択すると一発で松ケ瀬にツモられて4000.8000の親被りで3着へ。オーラスも松ケ瀬がアガリ3着のまま終了。

ここまで現状1位プラス79.9 2位の田内とは15.3差。トップを取ればジャンプアップの可能性が高いポジションである。5回戦、金プロ、関谷プロ、張替さん。6回戦に進む9位までは張替、関谷はほぼトップ条件、金は小さいラスでもOK。私は2着でもジャンプアップの可能性が残る。開局そうそう張替がアガリを重ね、ノーホーラのまま南3局親番へ。持ち点は20000点前後、3軒立直に仕掛けた状態から500オールをツモリ2着浮上するも、関谷に8000出あがりされオーラスに。

オーラストップまで16300点差、2着までは5200出あがりか1000.2000ツモ。ここでトップ目の張替からドラの白を打った後次巡白ツモ切りで再び立直。ここで②ー⑤にとるかドラの白待ちにするかで長考。②は安牌のうえ、タンヤオでダマが効く為3着は守れそうだが張替がもう1枚掴んで裏がのるか他での出アガリで2着になれるので地獄単騎の白で立直。一発で金からこぼれて8000。わずか1.5ポイント差でジャンプアップに成功。

ここまで本戦で15戦ラスなしは恵まれた展開が続いているが、最後の競り合いに勝っているのは好感触。後は、決勝のメンバーが誰かを見守るのみ。

当然ながら6回戦は板川プロの応援に回る。開局から劣勢だったが、嶺上ツモの8000オール、オーラスでの再度逆転を見届ける。いつもながら魅せる麻雀である。決勝の大舞台という条件で戦える喜び。あとは倒すのみである。

そして迎えた決勝戦。メンバーは私、山越さん、板川プロ、薬王寺プロ。

5回戦の長丁場、初戦から日和ると一気にペースを持っていかれる。開局、起家早々に山越から立直が入る。途中までイーシャンテン維持するも、ノーテンで流局。東2局1本場

四五六①③⑥⑦7899東東 ドラ5 ツモ⑧で①切りテンパイ外し、次巡9ツモで東と9のシャンポン立直。板川の追っかけ立直入るも板川から9出アガリ裏1枚で2600のアガリ。打点はともかくアガリで少しほっとする。その後致命的なミスが。東3局1本場、板川の仕掛けに二-五が打ちづらいと思っている状態での手牌

二二三五五六七八⑦⑧345 ドラ⑦ ツモ四 前巡に八を通しているにもかかわらず、リーパイミスで八でもテンパイに気づかず五で放銃。普段ではしないミスをするのは緊張しているつもりはなかったが、初戦故のプレッシャーがあったのであろう。南1局親番で山越の立直にたいして終盤に4が4枚見えだが1が残り2枚いる可能性が高い1-4待ちで追いかけて一発でアガリ。南2局、早々にドラ⑤待ちの七対子立直を打つも山越に追いかけられて1で立直一発平和裏裏に放銃。北単騎の選択もあったが、倍満の可能性残るテンパイを北単騎で打つつもりもなかったのでメンタル的なダメージはない。南3局に2000.4000をツモりオーラス2位の山越まで5200で同点条件。板川までマンツモ。仕掛けてホンイツとドラが9の為チャンタとの両天秤。ここで薬王寺から立直が入る。満貫直撃でラスまで転落するが中チャンタのドラ単騎テンパイ。ラス落ちはウマは-20、2着浮上は+20ツモってトップなら+40のウマをどうとらえるか。私見だが、2着順上昇の可能性ある場合はラス落ちの危険性があっても押す価値はあると思う。ここはトップの可能性を追う。④で放銃。幸い裏がのらず5200の失点。

大本命がいきなりのトップだが、まだ勝負は始まったばかり。1回戦目3着 ー15.4

続いて2回戦 まずは板川の連勝だけは避けたい局面。東3局南家ドラ③ 中盤に山越からのドラ③をチーすると板川からツモ切り立直。四四四五七⑦⑦東東東から⑦ポン打七の良形テンパイへ。次巡⑦ツモで長考。アンコの東と四がカンドラにならない可能性のみカンせずツモ切りだが、どちらものる可能性あるのでカン。嶺上で六ツモ1300.2600のアガリ。嶺上はでき過ぎだが、トータルトップをラスに押し付ける事には成功した。続けて南1局、薬王寺から立直 六七七③④⑤⑨⑨56889 ドラ⑨ ツモ三 現物はドラの⑨のみ、押し返すつもりではあるが、萬子が一枚も見えてない立直に対して2筋押す危険性と最終形のソウズの2度受けを嫌い988と落として追いつく。五六六七七八③④⑤⑨⑨56 ここに割って入ってきたのが山越。とにかく山越は手数が多い。普通なら曲げないであろう立直や仕掛け、受け入れの打牌選択や押し引きのバランスは優れている。薬王寺が⑥で山越に放銃。ドラの⑨が裏ドラ、あがればハネマンだったうえにここは痛い。その後も山越のペースで2回戦終了。2着+8.1 トータル-7.3 山越のみ連対でトータル+63.6

3回戦は山越の勢いを止めるのが最優先か。

そして3回戦 開局起家でダブ東ポンの対々和テンパイするも流局、次局2000オールツモで加点に成功する。 東1局2本場ドラの白切りテンパイピンフ一盃口で立直するも板川が山越から3900をアガリ親落ち。今一つ乗り切れない状態が続いた南3局 ドラ7東家 板川34800 南家 薬王寺32800 西家 軽部33600 北家 山越18800 ここで板川の親を蹴りつつ、薬王寺との連対が理想的。ここで板川から立直。ここで引いては板川の連対がほぼ決まる状態になるので、現物の⑤の後③を切り飛ばし戦う姿勢を見せる。裏スジの⑥-⑨とソウズのドラまたぎ以外は全て押す予定だったがここで板川が六をカン。今までに何度もみた嶺上からのツモ6000オール。これで板川のトップはほぼ確定。1本場カン3マチで先行立直をかけるも、薬王寺に追いかけられ8000放銃。これで、ほぼ3着以下が確定。

こうなればトータルトップの山越をラスに押し付けるくらいしかない。山越の立直が入ったがダマ平和の700.1300をツモり3着で終了。トータル-25.0 トップの板川とは78.7ポイント差。山越とは35.7差 4回戦は板川と2着順差、山越とは2着順離れるとかなり優勝の可能性が厳しくなる。

勝負駆けの4回戦 気持ちが入れ込み過ぎたのか、山越の親の連荘と放銃で持ち点を大幅に減らした3局1本場 東家 薬王寺34100 南家 軽部15800 西家板川20700 北家山越49400 一一二八八八④⑨27白發中 ドラ八 ツモ5 ドラアンコ、他が厳しいが大きな手を狙えるチャンス。縦重なりも多少意識しつつ、予想以上に手が進みこのテンパイ 一一一八八八③④66777 立直をかければハネマンだが、ここで32000決めると優勝争いまで一気に浮上。ダマ直撃の場合山越か板川のみ。既に仕掛けている薬王寺、板川のテンパイ気配も感じつつ④ツモで四暗刻テンパイ。ダマも考えたが薬王寺、板川の両者はトータルポイント的に私の立直には向かってくる可能性が高い為、気合をいれ立直。後はツモ山にいるかどうかだ。一発で裏乗れば出あがりでも3倍満あるなとほんの少し考えている途中に板川からツモの声。混一色対々和で2000.4000のツモあがり。終わった後に配信を見たがあの形から九をポンして混一色対々和に仕上げられる打ち手がどれだけいるのだろうかと思う。魅せる麻雀の宣言通り。結果、一度もツモらせてもらえず、ここまでの対局の勝負所をあっさり蹴られたのは流石に気持ちが少しだけ後ろ向きになる。しかし、対局中に考えても悪い結果しか出ない。残り2回の親番に期待を込めつつサイコロボタンを押すも、あっさり板川にあがられる。途中南3局に123の三色で立直するも実らず、オーラスもあっさり板川にツモられて4回戦終了。4着 トータル-74.9 首位の板川とは143.4ポイント、2位の山越と131.5ポイント差。トップラスで60差が縮まるとはいえ、10万点近くまで素点が必要な厳しい状態。可能性がある限りは自分の出来ることをするのみ。

最終5回戦 東家 山越 南家 薬王寺 西家 軽部 北家 板川 トータルトップがラス親の為、親番で加点するしかない。開局から山越がアガリを重ねる。3回戦ラスにして少しは足が止まるとは思ったが全く打ち筋にも変化がない。強い精神力。迎えた東3局

勝負の親番 三四五六六③⑤456789 ドラ6にて聴牌 ここで2000オール引いても局面的に変化なし、最低6000オールは欲しい手材料。④引きフリテン立直ドラ6か3引きまで待つ。薬王寺から④が切られる板川からも④が切られる。4枚目の④以外は鳴かない。決勝まで勝ち上がったのは大事な局面で打点の高いアガリで勝ってきた。今日に限っては変える気はない。変化する前に山越がツモ。これで南3の親は山越が大幅に点数を減らさない限り2人がアガリに来るので現実的に可能性は限りなく低くなった。板川も東4局で4000オールをツモり山越との差を縮めるも南1局でまたしても大幅に山越が加点、ほぼ一人舞台状態。

山越の親番で薬王寺が立直、国士イーシャンテンまでいくも、またしても山越のアガリ。

南3局最後の親番も手が整う前に山越が立直。3000.6000をツモりあげ、役満の複合がないルールなのでこの時点で優勝が100%消える。

迎えたオーラス、長い予選からの戦いもこの局が最後。目無しである。配信を見ている人が目無しについてどう思うかわからないが1000人参加の中のたった一人の優勝者が決まる瞬間を卓の中で見届けられる機会が今後どれだけあるだろう。オーラスだけは卓の中にいる観戦者だ。こんなに幸せな事はない。

当然板川も6万点近い差があっても諦めない。流局後手牌を確認する。12000の聴牌。1本場、またしても流局。手牌が開かれる。またしても12000の聴牌。闘牌帝王の名にふさわしい戦いぶり。後は山越がどこまでプレッシャーに耐えられるか。迎えた2本場今度は板川が立直。これを受けた山越が長考。テンポがよく打牌選択に迷いのない山越がここまで長考するということは覚悟を決めたか。手が少し震えながら7切り、優勝への聴牌が遂に入ったか。ここで終わるかまた次局に持ち越しかは牌に託すのみ。数巡後、山越が震えた手でアガリ牌を引き寄せた時に私の挑戦もひとまず終わりを告げた。

最後に決勝に残った方々にメッセージを。

薬王寺プロ 先日ありがとうございました。お互い勝負手が中々入らず悔しい結果となりましたが厳しい中での戦う姿勢参考にさせていただきました。今後のプロ活動応援させていただきます。大きなタイトル取られた時にあの薬王寺プロと決勝戦を戦ったと自慢できる日が来るように。

板川プロ 先日はありがとうございました。久々に競技麻雀の熱が入ったのは板川プロのお陰です。タイトル戦の決勝で板川プロと戦う目標は達成出来ましたが、倒してタイトル取る目標は達成出来てないのでまた沢山鍛えてくださいね。今度は残念会ではなく私を含めた闘牌セットメンバーで誰かの祝勝会を盛大に出来るように。

最後に山越君

先日はありがとうございました。思えばお互い予選で同卓して敗退していたのですがもう随分前のような気がします。最後までブレない意志のある麻雀、優勝された時の感極まった表情と閉会式のコメントを聞くと、自分以外でアマチュアで初めて勝ったのが山越君でよかった。勿論今でも悔しいので来年また決勝で会えるのを目標にお互い頑張りましょう。また会えるのを楽しみにしています。

ここまで読んで頂いた方々に感謝の意を表すると共に、来年は優勝した自戦記を書けるようにまた研鑽の日々に戻ろうかと思います。

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