ヴェストワンカップ【WEST ONE CUP】西日本最大級メジャー麻雀大会 ベストワンカップ

(ヴェストワンカップ/ベストワンカップ)

WEST ONE CUP 自戦記 【友添 敏之】

    ”もしもこうしていたら” なんかないんだよ

オーラス、二回ドキリとした。
一度目は、田内プロが活き活きとした声で「リーチ!」と発声したとき。
二度目は、同じく田内プロが興奮気味にを手元に引き寄せたとき。

どちらも、ああ終わったな、とハッキリわかった瞬間だった。

決勝戦に残ったことがまずかなり奇跡的で。
いや、これは確率的な話だけではなく、どの道程の険しさも含めてね。
最高位戦関西リーグ成績上位シードをもらっていた僕は、この大会に本選から出場。
その初日、5半荘で上位約30%が翌日に進出できるやつ。
この1半荘目で箱下一万点のラスを引く。
ひぃぃ!!マイナス70P!!

ケツに火がつきながらも、そこから怒涛の連帯祭りでなんとか最終戦にラスさえ引かなければOKな条件に。
でも、そんな時こそだいたいラスる、そうそう。
南2局にラス目に立つが、の手をライバルからリーチで出アガり耐えましたー!

ベスト48から16を決める本戦2日目。
1半荘目のメンツこれがなかなか、一般予選から勝ち抜いてきた方と、ベスト48シードの清水将王。
そして、これも一般予選から勝ち抜いてきた僕の店”麻雀Potti”の店長海保。こいつがなかなか強いのです。
結構山場やねいきなり、と思いながら集中して打つも競りながらの3着。
あんまり良くない出だしやけど、昨日のこと考えるとまだ天国。
人は窮地を体験すると強くなるね、全くショックじゃなかったもの。

そこからはボチボチ順調にポイントを増やし、この日も通過。
このブロックからは、後の優勝者となる田内プロ。さすがの通過清水将王。日本プロ麻雀協会Aリーガー土子プロ。
そして僕も、店長海保もしぶとく残ったのでした。

そして6日後、ベスト16から4に絞る準決勝の日。
ここらから、更にメンツが濃くなります。
1半荘目、出たーっ!!
デジタル界のカリスマ小林剛プロっす。
そして一般からの勝ち上がり松原さんと、同じ最高位戦関西の実力者飯沼プロ。
ここまで来るとこんな豪華な、メンツと打てるんやなあ嬉しいなあと集中して臨むもまたまた3着スタート。
競ってたのに!俺ばっかり3着!
2半荘目も競って3着。3着名人。

で、迎えた3半荘目、放送卓での対局。
相手は、最高位戦のボス、今麻雀界でもっとも強い(かもしれない)村上淳プロ!
そして、プロ麻雀協会Aリーガー土子プロ。最高位戦関西で一緒にやってる玉利プロ。
東パツ親番、村上プロの8巡目リーチに対し、2シャンテンから中途半端な斜め前進で放銃
スジを追ったでリーチタンヤオイーペーコーの5200点。
連続3着でポイント落としていなかったらシビアに降りる手牌だったけど、親を流したくない思いから粘りに行って失敗。
実は、この大会通して一番悔やんだというか、こりゃマズいなと思った局はここ。
こりゃアカンかもなあ、まあ自分のせいやけど。
という気持ちで迎えた南1局親番。当然のようにラス目。

祈るような気持ちで模打を繰り替えず僕、願いが叶う聴牌一番乗り。
アンコのドラ単騎でリーチ!
親の先制リーチ、みんな大好きに決まってるけど、待ち云々よりも大切なことがありまして。
それは”出来ることならドラは河に置かない”ってこと、他家が来やすくなるからね。
とゆーわけで、待ちは良くないながらもこのリーチはボチボチな満足度。
3巡ほど平和に過ごしていたが、そこへトップ目の玉利プロからリーチの声。
マジかよーと思いながら宣言牌を見ると・・・、なんとドラの!!
わっほーい!と一気にトップ目に立つ。
そこから、押し寄せる押し寄せる好ツモの嵐。
最後には、リーチを掻い潜って現物ダマでのタンピン三色を村上プロから出アガり、7万点超の大トップ!

この3半荘目での大きなポイントを活かして、その後は他家とのポイント差を意識した打ち回しで最終戦5位で迎える。
卓内1位になればほぼ文句なし、そうでなくても2着以上でボチボチ点数あれば決勝やなってのが自分の条件。
総合トップの井浦さんが同卓にいて、そこが基準の闘いになるね。とビンビンに意識してたけど、展開が向いてスルスルと僕は2着目。
井浦さんは自然な感じでラス目に。
結果、4万点超えの2着を取った上に井浦さんを抑えることに成功。デカいトップを獲った田内プロに卓内トップは譲るも、まあこりゃ行ったね。
と思ってましたこの時点では・・・。

4卓ある準決勝のうち、僕の卓が最初に終了。
あとは結果を待つだけなんやけど、控え室でドッカと座って満足感に浸る僕。
見学してると気が気じゃないので余裕を見せるフリしてるのですね、これは。
なのに、良かれと思ってのことでしょうが、色んな人が他の卓の状況を教えてくる。
「サイコロさんがトップ目だ」
「佐々木さんが8000点アガった」
「玉利さんが5万点持ってる」
んん?
これ、俺に都合悪い話ばかりやんけ!!
ってことで、あってはならない条件が重なりまくり、打ち切り時間いっぱいの最終局を迎えて、僕の決勝進出の目はなくなったのでした・・・。

ってはずだったけど、ここで自戦記書いてるのは奇跡が起きたから。
ほぼ決勝進出を決めていた佐々木プロの卓、加藤さんが親のリーヅモ国士を炸裂させたのです。
トップ目の佐々木プロは順位ウマの20pと国士の16p、合計36pを失い、12.7p差で私友添が決勝進出と相成ったのでありました。
いやあ、ラッキーな男。
めっちゃ優勝しそう。と我ながらほくそ笑んだ土曜の夜。

で、明けて決勝の日曜日。
メンツは、日本プロ麻雀協会からAリーガーサイコロ太郎プロとB2リーガー田内プロ。最高位戦からC3リーガー玉利プロとC1リーガー友添。
”関西初のメジャータイトル戦開催”を合言葉に進められてきたこの大会、決勝戦が関西のプロばかりというのはなかなか乙なものっすね。
幸か不幸か、ベスト48からの超シード選手達が全て敗退したことで、実況解説陣も超豪華!
実況の梶本さんに加え、多井プロ、村上プロ、小林プロに解説してもらえるなんてこんな幸せは打ち手としてなかなかないっす。

1半荘目、東パツ。
早速好牌の僕。くくく、このタンヤオをリーヅモで決めてやるぜと思ったのもつかの間、アッいう間に田内プロから先制リーチが入る。
僕もすぐに追い付き、間髪入れず追っかける!
が、田内プロの勝ち。リーヅモ南裏1。むむむ。
東2局、気を取り直して鳴いてく。すぐに動きたいが、一枚目の役牌はスルー。2枚めが出るまでにマンズを引き入れてそれからポン。
ピンズをスムーズに払って、を重ねてのホンイツ南ドラ1で聴牌!これは良い手応え!
が、今度はサイコロプロからリーチ。
まあ当然全てツモ切りで応戦するも、またもや負け。サイコロプロが1300・2600ツモ。
ぐぬぬ。みんな恵まれとるのう…
人の幸福、自分の不幸には敏感なのが人の常。

東3局、ドラの親番。
タンヤオ牌ばかりを引き入れて最速聴牌。

しかし、ドラ表のこの待ちは厳しい!んで、まずはダマ聴を選択。
”待ちが悪くて高い手”ってのは一般的にはダマ聴にしがち。
しかし、これには僕はボチボチ反対派で、”枚数は少ないがダマなら出易い待ちの高い手”と”枚数が少なくてダマでも出づらい待ちの高い手”は明確に分けなきゃいかんのです。
例えば、中張牌ドラ単騎のチートイツ。
よほど場に偏りがない限り、ダマでなかなか場にはこぼれてこない牌。
こーゆーのを早めに聴牌したらリーチが優勢。ダマでもリーチでも出てきづらい待ちなら、自分のツモ番と打点を増やして攻撃力アップ&他家に攻撃しづらいシチュエーションを作って防御力アップ。
攻守どちらにも有効なこの戦術を使わない手はないっつーわけ。

そんだけ言うならなんで自分はこれダマにしとるんや!
というツッコミが入ることになるでしょうが、これが実はその対局のステージによってもまた判断が違ってきてて。
局収支を最大限に高めるならこの手は即リーチが強い(と僕は思ってる)んですが、これは大きな大会の決勝。
できる限りこの大物手をアガりたい、打点上げたり他家への放銃確率を下げるより、優先されるのはこの手をアガること。
そんな時にはダマも有効になるのです。

で、結局僕は2巡後のをツモ切りリーチすることになるのですが、これには二つ理由があって。
一つは、ピンズの上が安くなる情報が出てこなかったこと。
そうなる情報が何か出てきたらダマにし続けようと思ってた。出てる牌によっては鳴いて待ちを替えようともしてた。
理由のもう一つは、ツモ切りリーチにすると他家がその理由を色々と想像することになるから。
打点アップの手替わり待ちだったのか、良い待ちへの振り替わり待ちだったのか、最終手出しをボカしたかったのか、などなど。
で、通常、端に掛かった両面待ちはないな(待ちとして十分でダマにする必要がない)となりがちやけど、この僕がドラ2持ってるケースはその中でもかなり有利な状況で。
ドラを複数持っている他家がほぼいない、そうなるとその視点から見ると、”打点が十分だからダマにした可能性もある”となったりもするのです。
そうなると、端牌も簡単には切りづらくなる。字牌も気持ち悪い。困った。
そんなふーになるのです。舞台が大きくなればなるほど、考えれば考えるほど、いつもと同じように確率やロジックで押せる局面が減っていくのです。
大怪我したらハイオシマイってなる選択はなかなかしづらいんですね。

つーことで、鳴かれづらい牌を持ってきたらツモ切りリーチをしようと決めてたわけっす。
その結果、後で映像観てみたら田内プロから出ていたかもしれないを止めてしまい、さらにはカンで役アリダマ聴をいれさせてしまうという!
色々と考えて失敗みたいになってる!
危ないぞ友添!
結果知ってるのにゾワゾワとしなきゃいかんこの感じ…
それでも、これが麻雀の不思議。なんとラス牌のを手繰り寄せた僕が、12巡目に6000オールのツモアガり!

一番恵まれてたのは僕でした♪わーい♪

トップ目のまま迎えたラス前親番、ドラ
配牌は、、打からスタートして。2巡目のツモで早くもイーシャンテンに。
ここで、チートイツの待ちとしてはかなり強いを打つ。親番でのチートイツ決め打ちは、かなり偏った時だけにしましょう。
流局時に聴牌はしておきたいっすからね、鳴けない手にはあまりしたくない。
特に、この手は、タンヤオ牌ばっかり、のところがトイツ手とメンツ手どちらにでも使える、そしてピンズで1メンツできてる。
この三つの理由でを切る。すぐ被る。ヒヤッ!!
とはなりません、過程ですから。

で、4巡目にツモ。ほら、こーなる。打で両天秤にかけながら聴牌受け入れ最大に取る。
んで5巡目に再度つもでこれ、
打牌候補はまあ、
これ、僕は迷わず切り。
ここでも”舞台”が重要になりまして、大きな大会の決勝戦親番。しかもダントツ気味の親だってのが超重要ポイント。
普段の麻雀なら打で両面手替わり待ちがベターなチョイスかもしれません。僕もほとんどの場合そうします。
ただ、この局のかなりの優先事項は先制リーチを打つこと。
全5回戦の決勝戦初戦。ほぼトップが確定したラス前で、親に大きな放銃をして2着争いから離れる選択はなかなかできないものです。
だからこそ、ここではまず親リーチを打つのが重要なのです。
リーチ打ち易い牌の受け入れは、打と打では雲泥の差。ということで、チートイツに決めて打
この間、約0.5秒。

解説の多井さんが、迷わず切ったことを拾ってくれます。
隣にいるアサピンさんも、その意図を完璧に解説してくれます。
嬉しーい!!

で、次のツモは生牌の
ええやんけー、一瞬にしてリーチ!

案の定、降りるサイコロプロと田内プロ。
しかーし!ドラドラの玉利プロはをポンして粘る!聴牌!
危ない、またもや危ない友添!!

が…
ツモ!
私です(^o^)/

しかも、裏ドラが!!6000オールでありまっす!(^o^)/

こんな顔文字出しちゃうくらい嬉しかったっす(^o^)/

でもね、結果はハッキリ言ってどうでも良いのです。
次にも同じようになることなんか無いんだから。
ただ、過程はちがいます。同じ内容の過程は選び続けられるから。
こーゆー地味だけど勝ち易い過程を常に選び続けることだけが重要なのです。
それだけが結果への近道なのです。

と、講釈を垂れながらも、僕は準優勝でした。
田内プロが劇的なハネ満をツモアガったから。
この局については田内プロはもちろん、色んな人が語ってるでしょうし僕は書きません。

決して、あのツモを思い出したくないからじゃないですからね。
誤解なさらぬよう…

でも、別に思い出したくはないっすね。確かに。
映像をチェックしながらこれ書いたんすけど、あのオーラスだけは観てると少しだけゲンナリなりますね。ヤッパリ。

輝いてましたね田内さん。
最後までしぶとく凌ぎ、リーチも鳴きも果敢に打ってきましたねサイコロさん。
プロ入り二年目で猛勉強して決勝まで残り、まだまだ足りないところはあるけど一生懸命打ってたね玉利さん。
そして、自分で言うのもなんやけど、かなり積極的にカッコ良く打っていたね友添。

まあとにかくやってて楽しかったし苦しかったし、しかし終えてみると悔しさ10に対して清々しさ90。
負けると悔しくて悔しくてたまらん性格の僕なので、惜しくも準優勝したあとにこんな気持ちになるのは珍しい。
やり切った満足感と、対局者全員、特に田内さんへのリスペクトがあったからのことでしょう。

満足!!(^o^)/

これから何年も続いていくことになるであろうこのタイトル戦。
”初代王者”という強烈な名前は持ってかれたけど、しゃーないので僕は”3連覇”みたいなもっと強烈なやつを狙っていきます。今後。

来年もこの舞台に立てるよう、精進しよっと。
今日からまたやってきます。

結果を残すために、一つ一つ積み上げます。
”麻雀には過程しかねえ”の精神で。

WEST ONE CUP